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月並空間

月並空間コラムCOLUMN

2019年8月12日

羽化した蘭

羽化した蘭

小2の夏休み、祖父母の家の裏山で、息をのむほどの美しいものに出会いました。祠の一角にグリーンに透き通って輝いているところがあり、近づいていくと翡翠でできた蘭の花のようなものが。さらに近寄ってみると、それは羽化したばかりのセミでした。

無防備でおそろしくはかないものが放つ、圧倒的な存在感。そのときの衝撃は私に刻印され、今でも上書きされないまま残っています。

この世界では、人間以外からしか学べないことのほうが多いのかもしれません。

なかでも、虫から大切なことを教えてもらう人は意外と多いように思います。虫が人間から教えてもらうことはあまりなさそうですが、人間が彼らを俳句に詠んだり、絵に描いたりしていることは知っているのかもしれません。

ちなみに、羽化したセミの前から動けなくなっていた小2の私は、朝ごはんのために私を探す祖母の声で我に返りました。神隠しって、ああいうときに起こるんじゃないかという気がします。

あのとき自分が見たものについては、なぜか口外してはいけないような気がして、誰にも言いませんでした。でも書いておきたい気がして、こうやって書いています。

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